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2024-03-19

2024年3月11日 南橫三星の百岳二座關山嶺山と塔關山とを登る

隣り合う關山嶺山(赤)と塔關山(青)
今日の目的地百岳二座は、3月10日から12日までの二泊三日の山旅のメインである。実は、この二座は2022年末に計画したが、体調不調のため取りやめた。それから1年以上が過ぎ、今回の実行となった。筆者は2022年6月に、登山中の事故で怪我を負い、3カ月ほどの療養をした。その後、少しづつ再開したものの、後遺症の腰痛があり、なかなか高山への復帰ができなかった。同時に年齢が増えるにつれ、体力も以前のようではなくなってきている。今後台湾の高山をまだ登っていきたいが、そうしたなかで、南橫三星の内まだ登っていない当二座を登った。去年9月の玉山、そして11月の南湖大山への登山も確かに高山の登山であるが、山と溪谷社取材の登山であり、筆者自身の企画実行とは異なる。

關山嶺山への登りで見る塔關山(左から2番目)と庫哈諾辛山(最右)
南橫三星とは、台湾の南部で中央山脈を越えて台湾島の東西海岸を結ぶ南部橫貫公路上の登山口から、割合と簡易に登頂できる三座、關山嶺山、塔關山及び庫哈諾辛山の三座を指す。庫哈諾辛山は、2020年12月の南一段縦走の際に登頂した。その時は、南橫公路の天池と向陽との間は、2012年の莫拉克台風による大災害復旧工事中で一般車両は進入禁止であった。夜中に隠れて車で近づき、登頂するという登山者もいたが、筆者は景色もない暗闇で登頂しても意味がないと思い、この区間の工事完了と通行開放を待った。2022年5月に一般車両の通行が可能になった。一週間の内、二日は工事のためまだ全く通行禁止であるが、開放日を選び今回の実行となった。

關山嶺山山頂のメンバー

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梅山口のゲート前で7:00開放時間を待つ
天気予報はあまり芳しくないが、5時に起床し、外が明るくなるとそれほど悪くない。昨日南橫公路通行制限区間のゲート前に停めた車で待機し、7時きっかりに開いたゲートから出発する。曲がりくねる道を進むこと25分で、2020年に歩き始めた南一段縦走の中之關古道登山口を過ぎる。さらに数分で天池を通過、峠のトンネルを抜けて7時50分、埡口の關山嶺山登山口(標高2722m)につく。駐車場にはまだほかの車はほとんどない。

中之關古道口を過ぎる
目的の稜線が見えてきた
他の車はまだほどんど来ていない埡口

關山嶺山

埡口
雲の間から朝陽がこぼれる。少なくともしばらくは天気は持ちそうだ。支度をして8時少し前に登山を開始する。トンネル入り口上部のザレを登っていく。登るにつれ、駐車場の車が小さくなっていく。登ること約20分で灌木帯に入る。向陽大崩壁が、 埡口の谷間を埋める雲海の上に壮絶な姿を晒している。時々雲が切れ、陽光が差し込む。ちょっとした岩壁を登り、8時32分稜線上に上がる。この部分は、日本時代1930年に開かれた關山警備道の峠でもある。ここから塔關山北峰の山腹を縫って進む、關山警備道の道筋が残っている。峠のすぐ上にちょっとした平らなスペースがあるが、ここはその昔あずま屋があった場所かもしれない。

下に駐車場をみてザレを登る
対面の向陽大崩壁にガスが上がってきた
岩を登戸って稜線へ

稜線上に上がった、0.5Kキロポスト
稜線に出ると風を感じる。登山道脇にも強風注意の表示がある。登山道は、ここから北に稜線を追って山頂へと続く。登山者が多いので、道筋ははっきりしている。2,3日の雨でぬかっている場所もある。台湾ビャクシンも風雪にたえて生えている。後方から若者が追い越していく。9時3分、0.5Kへのキロポストを見る。その先数分で、ロープの架かるかなり高い岩場を登る。

稜線を登る、対面の山腹には廃棄古道がいく
稜線上のビャクシン
1Kキロポスト

ちょっと長い岩場
幸い天気はまだもっているので、振り返ると相対的に低くなった塔關山がその北峰の向こうにその山頂を見せる。その右側には、庫哈諾辛山が頭に雲をかぶり、その山腹には天池と曲がりくねっていく南横公路が判別できる。一方進行方向には、こちらも相対的に低くなった向陽山への稜線のかなり下に、向陽へと続く南横公路が壮絶な大崩壊の下を横切って進んでいる。

場上部
庫哈諾辛山の下方に天池、そして山腹を行く南横公路

断崖の下方、雲の下に南横公路が行く
關山嶺山山頂が見えた
9時27分、最後のコブを越すと前方になだらかなザレの上に關山嶺山の山頂が現れる。既に登頂を終えた若者とすれ違う。9時31分、山頂(標高3176m)に到着した。周囲は大分ガスが上がってきて、遠くはあまり見えなくなる。山頂で休憩していると、キンバネホイビーがやってきて周囲を飛び回る。おそらく登山者が餌をやっているので、人を恐れないのだろう。


山頂の筆者
キンバネホイビー(金翼白眉)
稜線上の樹林を下る
9時56分、山頂をあとに往路を下り始める。途中登ってくる登山者グループとすれ違い、下っていく。人が多いと岩場はおそらくかなり混雑するだろう。次第に谷間から上がってくるガスを気にしながら下り、10時37分峠部分に戻る。稜線道から離れ、山腹を下る。ザレ場を下り、11時登山口に戻った。距離2.5㎞、上昇下降各435m、活動時間約3時間、コース定数10である。

旧關山警備道の峠

満杯の埡口駐車場

塔關山

大關山隧道を抜ける
埡口には、大勢の遊楽客を含めた人があふれている。駐車場も満杯だ。次の目的地塔關山へとすぐに向かう。トンネルを抜けると、霧が濃くなっている。11時13分、運よく塔關山登山口まえの駐車場に一台スペースがあり、駐車する。メンバー中の二人は、すでに登っているので車に残るという。11時20分二人で登り始める。




ちょうど一台のスペースがあった
登山口

樹根の道



塔關山への道は山頂から北へと下る支稜をたどる。木製階段道が切れると、根っこが地表に現れる坂を登っていく。坂が緩やかになり、11時36分大關山駐在所遺址を過ぎる。説明看板の後ろは、広い平らな場所があり、關山警備道の駐在所があった場所だ。

緩やかな坂の森を進む
大關山駐在所遺跡の説明板
尾根上の道を登る
道は、ここから尾根に取りついて登っていく。登るにつれ、霧が濃くなってくる。大きな切り株も目に付く。断崖注意の標識をみて急坂を登り、12時携帯電波が届く表示のある丸太休憩椅子のある場所を過ぎる。すぐに登山口から1K、山頂まで1.2Kキロポストを見る。

丸太椅子の休憩所、登山口より約1K地点
急坂を登る
またしばらく急坂が続く。晴れていれば木々の間から遠望ができるのだろが、濃くなる霧の中ではひたすら登るだけだ。路面には水たまりも目立つ。今回は長靴を持ってきたので、助かる。朝關山嶺山ですれ違った若者二人のパーティーが登頂を終え、下ってくる。体力の差を感じる。12時36分、少し窪んで風が当たらない、登山口から1.5Kキロポスト下の場所で休憩し、行動食をとる。

森は次第に霧が濃くなる
水たまりも多い
登頂して下山していく若者
残り0.7K
残り0.7Kだが、勾配はきつい。登ること数分で、岩場が現れる。ロープだけでなく、右側に安全網が取り付けられている。最後の森の中の急坂を行き、13時36分両脇の樹木が切れると、そこが山頂だった。登りは2時間15分ほど要した。風の吹きすさぶ標高3222mの山頂は、濃霧に包まれ、まったく展望はない。雨ではないのが幸いだ。

岩場を登る

最後のパーティとすれ違う
残りは0.2K
山頂の筆者
急坂を下る
小休憩後、そこそこ下り始める。南横公路のゲートは17時に閉まるので、それまでに梅山口まで戻る必要がある。霧雨でぬれた岩場を慎重に下る。14時20分、1.5Kキロポスト通過、更にくだって14時42分、1Kキロポストを通過する。14時58分、登山口まで0.5Kのキロポストを見てすぐに、大關山駐在所遺址につく。

ネットの岩場を通過
登りに休憩したポイント

登山口まで0.5K
まだ時間的に余裕があるので、遺跡を少し探索する。ほかの駐在所遺跡で見るような日本時代のビール瓶などはすでにないが、当時の電話回線用に使われていたと思われる碍子は残っている。敷地はとても広い。低い石積み壁もある。10分ほどうろついたあと、また往路を下っていく。登坂時よりも更に濃くなった霧の中、四方八方に枝を伸ばした台湾ツガがワイルドな姿を見せる。枕木階段があらわれ、間もなく15時20分登山口にたどり着いた。往復4.4㎞、昇降各600m、活動時間約4時間、コース定数15である。

広い大關山駐在所跡地
碍子が転がっている
濃霧に浮かぶ台湾ツガ(鐵杉)
濃霧のなか我々の一台だけが残っている
登らず車に残った二人は、近くを散策したということだ。登るときにとまっていた、隣の栗間はすでになく、我々の一台だけだ。汚れた長靴を履き替え、さっそく梅山へ向けて南横公路を下り始める。

霧の天池付近

落石よけトンネル
霧はとても深く、3,4メートル先は視界がきかない。この時間帯でも対向車があるので、要注意だ。ゆっくりと進み、15時40分庫哈諾辛山への登山口を過ぎる。その先数分で天池を過ぎる。16時少し前、中之關古道口を過ぎるころから、霧が薄くなる。落石避けのトンネルをいくつかくぐり、16時25分梅山口に帰り着いた。




朝出発前に現れた台湾犬

もう一晩青年活動中心に泊る。主要な予定を完了し、皆気持ちが楽になる。ビールなどを開け、ゆっくりと食事をする。明日は、まだ一座登山があるが、簡単な登りなので負担は少ない。21時過ぎに消灯する。