このブログを検索:山名などキーワードを入れてください

2012-09-18

2012年9月17日 陽明山荷蘭(オランダ)古道をへて草原の山々へ

北五指山近くの草原上の池、七星山擎天崗方向を望む
久しぶりに陽明山歩きをしてきた。以前は、陽明山国家公園の正規登山道を歩いたが、かなりの部分をカバーしたので、今後はそれ以外の山道歩きをしていくつもりであった。その最初として、興味をそそる名前の荷蘭古道と下りに内寮古道を選んで歩いた。こうした登山道は、もちろん公園管理局の管轄ではなく、道の整備度や道標など当然正規登山道の水準には及ばない。天候が悪かったり、山歩き経験が少ない場合など、おすすめできる道ではない。ただ、そのかわり静かで思いがけない景観に巡り合える。


内寮古道の土地公祠、古道の特徴だ
なぜ「荷蘭」古道なのか、その来歴は次のように言われている。台灣は、十七世紀半ば鄭成功がオランダ軍を滅ぼし、明朝政権が中国本土の領土回復基地として台湾の統治を開始する前、十七世紀初頭スペインとオランダがやって来て植民地統治を開始していた。オランダは台南を中心とした南部、スペインは淡水や宜蘭など北部を中心に支配を拡大していた。全世界での勢力拡大を目指すオランダは、1642年スペイン軍を打ち破り、単独の台湾植民支配を確立した。荷蘭古道は、そのときオランダ軍が進軍に使用した道だというのだ。この説に対し、清朝統治下、この付近は湖南省出身の兵士が守備をしていた、台湾語で湖南は河南に音が近く、それが古道の命名のいきさつで更に歴史的な尾ひれが付き、音が近い荷蘭になってしまった、というものもある。


右下の內雙溪から荷蘭古道を登り、西側の内寮古道を下る。
荷蘭古道は、台北市士林区內雙溪の至善路の奥まったところから始まり、高頂山の尾根を登って草原に出る。草原の道を進むと左に北五指山を分岐し、擎天崗から風櫃嘴へ連なる陽明山公園の登山道頂山石梯歩道のほぼ中間地点、杏林山の近くで合流する。内寮古道は、平等里の内寮から竹篙山の麓を谷沿いに擎天崗へと続く道である。途中土地公の祠や、石積みの廃屋もあり、昔から歩かれている古道の趣がある。今回のルートは、登りに荷蘭古道を取り、尾根道を石梯嶺を越えて擎天崗へ歩いた。その後環形步道を竹篙山へ向かい、竹篙山歩道の分岐からまもなく左に別れる道を竹篙山南峰へ、そこから内寮古道を経て内寮へ下った。


バス停から舗装路を歩く
MRT劍潭駅から至善路を內雙溪の坪頂古圳步道口まで行く小18番バスがある。このバスは7時半に出発する便があるので、7時前に自宅を出発した。劍潭駅のバス停では、陽明山へ行く紅5番バスは長い行列ができているが、小18番バスは数名の乗客だけだ。途中ラッシュアワーの影響を受けるが、至善路に入ると車は少なく、8時10分過ぎに終点の歩道口駅に着いた。昨日まで三日間、雨や曇りの天気だったが、今日は晴れに恵まれた。ただ、吹いてくる風は涼しい秋の風だ。今年最後のツクツクボウシが鳴いている。支度を済ませ、8時20分に出発する。


萬溪產業道路から見る五指山から、大崙頭・尾山へ続く尾根筋(クリックで拡大)
風行咖啡の荷蘭古道登山口
登山口バス停から、舗装路を登っていく。途中左に大崎頭歩道が別れ山腹を登っていく。道が大きく左に曲がるところで、坪頂古圳登山道が始まる。石畳の台北市親山歩道である。すぐに田尾仔橋が現れ、平林坑溪を渡ると、石段の上りが続く。登って10分ほど、左に親山歩道が折れていく。そのまま直進し登ると、登峰圳水路脇の道になる。これを左に折れて登ると、萬溪產業道路に出る。バス停からここまで約25分であった。眼前には、大崙尾山から大崙頭山をへて、五指山へ伸びる山稜のパノラマが広がる。右の近い山は鵝尾山だ。

左に産業道路を登っていく。結構急坂だ。道が右に曲がると荷蘭古道の道標がある。風行咖啡觀光果園の登山口だ。この先に行ったところにも登山口があるそうだが、こちらが近いので左に曲り、土の登山道を行く。歩いてまもなく右から道が合流する、もう一つの登山口からのものだ。道は、なだらかな登りだ。石段や苔むした石積みの低い囲いが現れる。古道の特徴だ。沢が近づいてくる。水量はあまりないが。ここで右に直進する道は、沢沿いをゆく荷蘭古道の東線だ。大石がゴロゴロする沢を渡り、稜線をゆく西線をとる。時刻は9時10分、風行咖啡の登山口から約20分である。


苔むした石積みの屏わきを行く
山道は、ほどなく急な登りとなる。滑りやすいところには、補助ロープも渡してある。石に白ペンキで5.7kと記してある。この山道は、他のこうした類の道で多く見かける登山クラブの標識リボンが殆ど無い。聴くところによると、わざと外して行く人がいるとのこと。このペンキ路程石は、劉さんというボランティアの人が書いたものだろう。数年前にこのあたりを整備しているそうだ。登ること十数分、木々の下の広場にでた。ここは、道が四方向に続いている。すぐ左に折れる道は、下って內雙溪古道へ続くものだろう。次の左に折れる道は、道はそこそこ歩かれているようだが、どこへの道かわからない。方角からすれば內雙溪古道へ下るのだろうか。高頂山へは直進の道だ。苔が生え始めているが、ペンキで5.6kと書かれた石が、この道の脇に置かれている。他には何の道標もないので地図など事前に用意していないと、困るだろう。


四方向の道が別れる尾根上の小広場、左下にペンキの路程石
迷い防止ロープと説明板
尾根道はゆるかやな登りが続く。まだ森の中だが、木漏れ日が明るい。一箇所だけ、標識リボンが結びつけてあった。尾根道を15分歩くと、森が切れ草原の入口になる。標識が立っている。ここからは(地面をはっていく)迷い防止ロープに沿っていくと、頂山石梯歩道につながる、とある。今日は天気が良いが、霧の中だと草の上は踏み跡がはっきりせず、迷うおそれがある。そこで、この黄色いロープが設けられたわけだ。草原に出た後、しばらくゆるい登りを行く。道から少し左に外れると、三角点がある。ここが高頂山(標高787m)の頂上だ。時刻は9時48分、歩き始めて約1時間半だ。陽射しはまだ強いが、暑さを感じない。三角点の上に腰掛けて、食事休憩をする。
ロープに沿って進む
休憩後ロープに沿って進む。数分草原の道を歩く。草薮もところどころ生えている。左に草原の尾根が伸びているようだ。これを行けば北五指山へ続くはずだ。何も標識がないが、草原をそちらに進む。ところどころ土の踏み跡が現れ、正しいことを確認する。途中には牛が水浴びや飲み水に使う池がいくつかある。今日は、ここには牛は一匹もいないが。わずかの歩きで、北五指山(標高790m)に着いた。頂上といっても三角点があるのでそう言えるだけで、だだっ広い草原である。ここは高頂山よりさらに良い展望がある。台北市街もうっすらと見える。101ビルがかすかに判断できる。七星山や擎天崗、石梯嶺と杏林山が見える。その奥には磺嘴山の山容が大きい。もう少し空気が澄んでいれば最高だが。


北五指山頂上、基石がある。竹篙山と背後の七星山が見える
広がる草原、左の山は石梯嶺、右の小さい山は杏林山 、中間に遠く見えるのは磺嘴山(クリックで拡大)
やって来た道を戻る。このあたりは迷い防止ロープもなく、霧の中では困るだろう。ロープ道に戻り頂山石梯歩道へ進む。道は、草むらや草原が交互に現れる中を下っていく。石畳の頂山石梯歩道近くまで来ると、牛が一匹ずっとこちらを見ている。10時半に頂山石梯歩道に合流した。ここには牛に注意と、歩道から離れるな、という看板が立っている。標識リボンと小さな道標が脇の幹につけてある。去年5月に来たときは、台北近郊登山の日も浅く、そのまま風櫃嘴へ正規登山道を歩いた。こうした草原のあることも知らなかった。


杏林山が手前に、頂山石梯步道はもうすぐだ
荷蘭古道と石畳の山道との分岐
擎天崗へ頂山石梯歩道を進む。ここは杏林山の巻き道部分になる。進むと小草原が現れる。風の影響で幹が曲がっている杉が何本もある。視線を遠くに移せば、これから登る石梯嶺の下に草原が広がっている。下がっていくと、小さな杉林を抜けて、草原の登りが始まる。ベンチが二箇所設けられ、上側のベンチには登山客が休んでいる。ここから見ると、大尖山がぽっこり頭をのぞかせている。杏林山の右には先ほど行った北五指山が連なっている。草原が切れると潅木の中の上りとなる。登りがほぼ終わりの頃に、左側に小さな草原がある。基石があり、ベンチも設けられている。時刻は11時10分、ここで少し休憩した後、歩道を登り石梯嶺の頂上(標高865m)を過ぎる。今日の行程の最高地点だ。頂上は長細く、道がそこを越していく。七星山や擎天崗が大分近くなってきた。


石梯山への登り道の草原、左から大尖山、杏林山、北五指山
石梯嶺 から下りきり、磺嘴山歩道の分岐に着く。磺嘴山は保護地区になっているので、入山には許可が必要だ。いずれは登ってみたいものだ。少し行くと、左に道が森の中を下りていく。入口には何の道標もないが、覗きこむと枝に標識リボンが結ばれている。これを下って行くと、內雙溪古道につながる。さらに潅木の道を下りきる、草薮の中を擎天崗東峰(標高791m)へ少し登り返す。下って牛止め木の柵を過ぎると、左に環形歩道が、右に魚路古道が分岐する。右下の方からエンジンの音が聞こえる。下を覗いてみると、四名の作業員が魚路古道の草刈りをしていた。正規登山道はこうした草刈りも定期的に行われている。


路上の柵、擎天崗はもうすぐだ
石畳の環形歩道を進む。トーチカの脇を過ぎる。擎天崗の草原を行き来する観光客が見える。黄色の衣服を着た数人のグループが、何か運動をしている。コマーシャルビデオでも映しているのだろうか。道は下って行き、沢を越える。このそばから土の道が下っていく。これは內雙溪古道の入口だろう。石畳の道を登り返し、トーチカのある竹篙山への分岐を左に曲がる。環形歩道では、数名の歩行者とすれ違った。ここはやはり、人気のある観光地なのだ。竹篙山を僅かにいくと、左に道が分岐する。これが内寮古道へつながる道の入口だ。この部分は、前回来た時にも注意していた。


環形歩道と竹篙山步道の分岐、トーチカがある
内寮古道への分岐
道は下りはじめ、草むらと草原が交互に現れる。ところどころ、リボンが草に結びつけてある。数分で3.3kとペンキで書いてある石が真ん中に置かれている分岐に着いた。ここが擎天崗南峰だろう。左に行けば內雙溪古道につながる。右に取り内寮古道へ向かう。わずかで三分岐に着く、左の二本は瑪礁古道だ。右の道は急に高度を下げて涸沢に下りる。坂がゆるやかになってくると、沢音が聞こえ始めた。左に瑪礁古道からの分岐道が合流する。そのすぐ先で、番婆厝の石積み廃屋がある。かなり高い石の壁が残っている。この先で沢を越える。超えた先は二本の大木が生えている広場がある。時刻は1時10分、前の休憩から2時間ほど歩いてきたので、ここで食事をとり、休憩する。


大樹二本の広場、ここでひと休憩
最後の分岐、右の山腹道を内寮へ歩く
休憩後歩き始めると、すぐ竹篙山南峰からの道と合流する。ちょうど二人の登山者が下りてきて、先に下っていく。福徳宮の石の祠が道端に置かれている。この祠は今も拝まれている。その先で、また沢を越える。木の柵が造られている、わきには左へ瑪礁古道へつながる道が分岐する。この周辺は、多くの道が入り込んでいる。もう一度沢を越える。若い二名の登山者が登ってきた。その先で、左へ沢沿いに行く道を分岐するが、そのまま山腹を行く道を選んで下っていく。竹林の脇を行くと、下りが急になり、右に曲がった後舗装路が現れた。この舗装路を道なりに行くと、内寮についた。ちょうど14時発の小19番バスが出発するところで、運良く乗車できた。バスはかなりの高度を下って行き、朝通過した至善路を経由し、35分でMRT劍潭駅に着いた。

今日の登山行程は、距離約12km、休憩込の所要時間5時間40分である。登攀高度累計は1064mだ。登山開始(約250m)地点より終点(約500m)のほうが高い。今回の頂山石梯歩道は、来月仲間グループで訪れる予定がある。その下見としても役立った。內雙溪の周辺は、この二本以外にも多くの山道がある。いずれは、こうした道も歩いてみよう。


高度プロファイル

0 件のコメント:

コメントを投稿