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2013-05-31

2013年5月30日 平溪中窯尖-消墾嶺古道-暖東峽谷 忘れられた古道を下る

中央尖から見る中窯尖(2012/3撮影)、中腹に赤い靈巖寺が見える(マウスクリックで拡大)
汐止の四分尾山、七堵の姜子寮山、そして五分山と連なる山脈は平渓の谷と台北から基隆への谷間を隔てる屏風である。また、この山の麓には多くの炭鉱が栄え、そして廃れた。すでに訪れている姜子寮山と五分山の間には、幾つかのピークがあるが、まだ縦走していないので、いずれは行くことを予定していた。今回は、その内の一つ中窯尖に平渓側から登り、峰を越した後反対側の暖東峽谷へ下った。

南の嶺脚から北へ峰越え
高度プロファイル
中窯尖は、その南側枝尾根の山腹に滴水觀音靈巖禪寺がある。この靈巖禪寺の裏から尾根に取り付いて登る道がよく歩かれている登山道である。一方、北側東勢側は東勢大崙へ伸びる尾根が続く。この尾根の道、また沢を下っていく道がある。こちら側は、過去は集落があったが、今はその片鱗を残すのみで、自然の力に飲み込まれてしまっている。交通の便などの理由もあり、登山者にもあまり歩かれていない。東勢大崙への鞍部から暖東峽谷へ続く道が消墾嶺古道である。踏跡がはっきりっせず、標識テープも非常に少ない。途中渡渉部分も数カ所あり、その先の道筋が草で覆われて、とても判りにくい。石の状態などを見たり、地図と勘で道を探して行かなければならない場所も多く、この道はそれなりの経験者向けだ。

四分尾山から北東方向に伸びる山脈と過去の軌跡一部
平溪行きの795番バスは、一部の便は十分寮まで運行する。十分行き木柵7:15発の便は7:25にMRT木柵駅バス停にやって来た。106号雙菁公路を行くこと50分、8時15分嶺脚村に一番近い慈航宮バス停で下車する。慈航宮わきの道を嶺脚駅方向に下っていく。対岸の向こう遠くに見える稜線は、中窯尖がある稜線だ。嶺脚社区と表示がある橋で基隆河を渡ると、嶺脚駅が見える。河には苔に覆われた昔日の橋が並行してかかっている。手すりも壊れているので、今はだれもわたらない。列車の到着が間近のようで嶺脚駅のプラットフォームには、乗客が待っている。

嶺脚駅の周辺、基隆河の橋から望む
踏切を渡り、集落の間を行く。数十メートルの住宅地を抜けると、あずま屋と公衆トイレがある。この辺りは観光地として、また人が訪れるようになっている。赤いレンガ道は、観光目的で整備されたものだろう。靈巖禪寺への台車道を進む。一度沢を渡り、登りが始まる。振り返ると、特徴ある中央尖が向こうに見える。靈巖禪寺の山門が現れる。これは車道で、歩道はこの先にある。バス停から歩き始め約25分で、第一登山道入口についた。この先にも第二登山道がある。

台車道の靈巖寺山門
第一登山道入口わきの観音菩薩
第一登山道
第一登山道を登る。石畳の道は濡れて、苔ははえていないがとても滑りやすい。入口のすぐ上には、岩壁に観音菩薩の文字が刻んである。菩薩の文字のわきにはこの地の炭鉱、永昌煤礦の文字も見える。道はつづら折れになり高度を上げる。途中橋がかかっている。幅が道よりもはるかに広い、立派なものだ。約20分の登りで高度約120mをかせぎ、9時3分に靈巖禪寺に着いた。山肌に張り付くように建てられた靈巖禪寺は、その上に滴水觀音がある。鍾乳が作り上げた姿が観音のように見えることから、名付けられた。寺の境内から、正面に中央尖やその右に峰頭尖が望める。

靈巖禪寺
靈巖寺から望む、遠く左に中央尖
尾根道
登山道は、境内の奥にある。岩に階段が刻んである。その先の木の枝には、標識テープが何本もかかっている。ステンレス水タンクのわきをゆくと、道は方向を変え登りが始まる。数分の登りで、岩が露出した部分を過ぎる。ここは靈巖禪寺のちょうど上手の部分で、下に伽藍が見える。雑木林の稜線は、補助ロープがかかる岩登りもある。道はずっと登りが続く。30分ほど登ってくると、樹木の間から展望がきく。高度が上がったので、対面の柴橋坑山の奥には、石筍尖薯榔尖が見えるようになる。途中、右側の展望が開け、五分山方向が望める。10時に枝尾根上のピークに着く。右から道が合流する。道標はないが、これは鄉林農場からの道だろう。

登り途中から望む、柴橋坑山とその向こうに石筍尖や薯榔尖が見える
野牡丹の咲く道、正面の山は中央尖
中窯尖下の十字路、右が靈巖寺へ、左が中窯尖への道
ここから尾根は北方向に進む。まず急坂を下る。野牡丹の花が咲いている。小ピークを二、三越していく。どれも下り側は急で、補助ロープを頼りに下る。中窯尖の主稜線が近づいてきている。鄉林農場分岐から三十分で左に、谷を嶺脚方向へ下る道を分ける。そここら更に数分で、稜線にたどり着く。中窯尖は右に少し登ったところだ。10時42分に中窯尖頂上に到着した。標高605mの頂上は、周囲がすべて樹木、展望はない。今日はとても暑く、登りではかなり体力を使った。十分な水分と食事をとり、下りに備える。ここが今日の最高地点だ。

中窯尖頂上
東勢大崙への分岐部
11時に出発する。暖東峽谷からの603番バスは、便数が少ない。14時の便を逃すと、16時過ぎまでない。できるだけ14時のバスに間に合わせたい。先ほどの分岐に戻る。直進する道は、姜子寮山へ続く。いずれ稜線縦走で来ることがあるだろう。右に曲り、稜線道を進む。しばらくすると、左側に石積みの低い壁が続く。こうしたものは他所でも見かけるが、何の目的に造られたのだろうか。道は、けっこう草深い。

分岐から10分足らずで、右に石灼門へ下る道、そしてすぐ先に左へ東勢大崙への道を分岐する。石灼門への道は、不人気コースだということだが、東勢大崙への道も負けず劣らずだ。稜線道も草深いが、これはそれに増して踏跡もはっきりしない。標識リボンも多くない。ここからは、自分の道を読む能力が試されるところだ。幅の広くなった尾根部分では、大きく掘り返されている部分を通過する。それでも雑木林のなかで、明るい感じだ。20分ほど下ると、鞍部に着いた。直進すると東勢大崙へ登り返す。左には内西勢坑古道へつながる道があるようだが、これもほとんど歩かれていない道だろう。

主稜線からの下り道
消墾嶺古道の上部
鞍部からは右に消墾嶺古道を進む。この道も、踏跡が微かな道だ。先ほどのように、標識リボンも少ない。山腹をしばらく進むと、谷に向けて下り始める。虫がまとわりついてうるさい。もう、夏になったのだ。全身汗がふきだしている。帽子のつばからも汗が滴る。峠から高度約100m、20分ほど下ると沢を越す。その対岸には段々状の平地がある。石積みの壁は、明らかに過去の遺跡だ。聴くところによると、日本統治時代に西勢坑にダムを作るとき、そこの住人をここに移住させたということだ。このような山奥で大変だと思う。何を生業にして暮らしていたのだろうか。消墾嶺古道は、まさにこの集落との往来に使用されていたのだろう。今は、自然の力で木々が生え、森にもどってしまっている。沢から渡ったあと、標識リボンが付いているが、その先の踏跡がない。こうした場所は、泥の平地なので雨などが降ると、まったく踏跡は消えて全くわからなくなる。少し探し、下流方向に一番下の石壁沿いに進み道を見つけ、それを進む。

沢越え、奥に遺跡
残る石垣
また沢を越す
遺跡から十数分進むと、また沢を越す。越した後、また踏跡がない。少し下流側に右岸を行くが、どうも対岸に渡るようだ。渡ったあともまた踏跡を探す。そうこうしているうちに踏み跡に戻った。このように沢越えの後に踏跡がはっきりしないところが多い。標識リボンも殆ど無いので、石の苔がこすれている状態を観察したり、地図を見比べて見たり、今までの経験からの勘で道を探していく。周りは、沢音と蝉の鳴き声だけ、人気はまったくない。相変わらず纏わりつく虫がうるさい。

草に埋もれた土地公福安宮
大石のある沢越え、上流側を見る
右岸にまた渡り返し、少し登ると福安宮土地公の祠があった。12時12分、下り始めて約1時間だ。祠の上に、布の帯がかかっているが、そうとう古いもののようだ。祠自身も屋根に草が生えている。ただ、香炉が中にある。祠から10分ほど下ると、また沢を越す。沢の中には大きな石がある。沢を渡ると、同じく踏跡が不明だ。沢を少し下ると、また沢を越すようだ。沢を渡ると、果たして踏み跡があり、沢から離れて登っていく。山腹を進む。涸沢をまたぐが、大きく崩れている。鉄砲水で崩れたのだろう。その後は、道筋がはっきりしてきた。幅も広くなり、古道の様相が伺える。12時46分、左からの道と合流する。この道は東勢大崙から下がってくる道だ。

東勢大崙との分岐、左側から下ってきた
大岩の沢を渡る橋
道には石の階段なども現れ、道の状態は良くなってきた。13時少し過ぎに、大きな岩壁の上を水が流れる部分に来る。橋がかかっているが、注意深く渡る必要がある。滑って落ちたら、そのまま数十メートル流されてしまう。13時10分、暖東峽谷の遊歩道に飛び出る。分岐部分には標識テープがあるが、それ以外は何の表示もない。遊歩道は、とても立派な道だ。道なりに下り、あずま屋などを過ぎる。橋を二度越える。橋から上流方向をみると、右に東勢大崙が見える。13時17分、暖東峽谷園区の入口についた。これで今日の行程は終了だ。入口のわきにはお手洗いや洗面所が新設されているが、使われていないようだ。14時のバスまでしばらく時間があるので、食事や着替えなどしてゆっくり待つ。今日は、幸いにして雷雨はなく好天のままで下山できた。14時ちょうど、603番のマイクロバスがやって来た。暖暖駅から区間電車で台北に帰った。

暖東峽谷、上流方向を見る、右は東勢大崙
山越えの歩きは、縦走と違いピークの登り降りが少なく、単純な登山である。距離は約7.8kmで、休憩も含め5時間と少しで終了した。登攀高度は500mだ。梅雨があけたのだろうか、本格的な夏の山登りの様相である。汗のでかたが、少し前とは異なる。飲水の消費も多くなった。今日下りに歩いた部分は、経験者向けのルートであった。踏跡がもともと少なく、標識リボンも他所に比べたら非常に少ない。道を追っていける能力が試されるコースだ。不人気な山道であるので、ネット上の情報も少ない。

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