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2014-11-09

2014年11月5日 瑞芳九份半平山 劍龍稜 - 鋸齒稜の岩尾根から登り煙囪稜 - 茶壺稜を下る: スリル満点の大展望ルート

黄金第七稜から見る半平山、手前左の岩尾根が鋸齒稜、右が劍龍稜。右下方に廃施設が見える(2013/5撮影)
瑞芳の半平山は、日本人観光客が多く訪れる九份、金瓜石のすぐわきにある、岩が露出し鋭い稜線をもつ岩山である。標高は713mであるが、海岸に近く冬には強い季節風が吹き、金鉱が栄えた頃は鉱害もあり、樹木が育たない。そのため、その高さの割にはとても勇壮な景観である。整備された登山道が、ちょうど急須のように見える無耳茶壺山を経由して登っていく。この登山道以外に二つ、登山者が切り開いたルートがある。それが今回登った岩尾根の劍龍稜-鋸齒稜と草深い俯瞰稜である。

東の岩尾根から登り西の尾根を下る
歩行高度プロファイル
瑞芳の北東海岸際にある山は、特徴ある十の稜線が黄金十稜として選ばれている。いままで、そのうち六つを登っているが、今回の劍龍稜が第五稜、鋸齒稜が第六稜、そして下りに通過した茶壺山の支稜が第三稜、そしてその先更に下った煙囪稜が第二稜である。したがって、今回は一回で四つの稜線をカバーしたことになる。まだ、脚を踏み入れいないのは俯瞰稜だけとなる。これら十稜は海岸に近く樹木が少ないので、天気が良ければ大海原を眺めながら登山ができる。今回は、晴天に恵まれ雄大な風景を満喫しながらの登山であった。ススキの穂が秋の陽に映え、これまたとても美しい景色であった。

黄金十稜
台金公司バス停付近から望む、岩尾根が丘の上に見える
今回は他に三名が同行する。Zさん、LSさん、そして慢集団で一緒に登ったことのあるKさんである。瑞芳駅で集合し、7時半発の886番バスで登山口に向かう。十数分で海岸際の台金公司バス停に来る。空は晴れ上がり、山の方向をみると手前の丘の向こうに劍龍稜と鋸齒稜のシルエットが青空の中に突き出ている。手前のこの一帯は、採掘が行われていた頃は関連施設がたくさんあり、従業員がここで作業していたはずだ。今は、誰もおらず残っている施設も荒れるに任されている。元々は、わきの沢を伝って劍龍稜の登り口に行くルートであったが、その後ボランティの切り開いた沢を通らずに行く踏跡ができている。
劍龍稜に向けて登る、奥の山は南子吝山
劍龍稜下部の筆者
8時少し前、支度をして歩き始める。濱海公路わきの壁をよじ登り、草むらを分けて進む。そのうち踏跡や標識テープが現れる。それを追って草の中を進む。20分ほどそうした道を来ると、手前に排土の小山とその下前方にコンクリの広場とそこから広い舗装路が下っていく。この辺りは、金鉱の作業場所だったようだ。状態の依然とよい舗装道路を進む。8時半頃に谷あいに入り、左に四階建てのビルを見る。このビルもガラスが割れているが、まだ状態がよい。事務所ビルだったのだろう。そのわきを行き、沢際から小尾根上に延びる道を行く。8時40分、コンクリでできたあずま屋のような建物に着く。近づくと、あずま屋ではなく何かを下に落下させる作業台のようなもののようだ。少し休憩する。

岩尾根登攀が始まる
乾いた砂岩は登りやすい
下を見ると、廃事務所ビルとその向こうに青い海が見える。そのすぐ右上は南子吝山だ。そこから石梯坑山に向かって登っていく尾根が黄金七稜である。山の方向を見れば、劍龍稜がその名のとおり、恐竜の背のようの岩の稜線がゴツゴツとしてそびえている。10分ほど登る。南子吝山と同じぐらいの高さになる。鞍部で右に曲がる。左は、さきほどの沢際を進んでそこから上ってくる劍龍稜の末端だ。9時9分、草薮が切れて岩の露出した稜線が目の前に現れる。上方には、左側の鋸齒稜との合流点381峰が高い。

土の部分も現れる、前方左は381峰
岩の尾根は砂岩がメインのようで、乾いていれば表面は摩擦係数が高く滑りにくい。今日は、晴天で微風、岩尾根を登るには絶好の条件である。夏は強い太陽が照りつけ、ほとんど日陰のないこの稜線道は辛いの一言だろうが、秋のこの時期太陽光線は強いものの、微風があるので暑さはほとんど感じない。このルートは、登山者が自分で踏み出したものなので、歩きやすいようは対応は殆ど無い。岩尾根の斜面は、右側は切り立っているが左側は幸いにして傾斜が緩いので、岩だけのセクションでも岩の先端に手をかけ、足の摩擦だけで十分に進める。岩のセクションと草が生え土があるセクションが交互に現れる。

右に基隆山が見える、手前の尾根は俯瞰稜、その奥に煙從稜そその上に茶壺山のピーク
狭い岩尾根上ではバランスが大切だ
登るに連れ、視界が広がる。右には俯瞰稜を挟んで基隆山が、左には南子吝山から延びる稜線の向こう遠くに南雅山や鼻頭角が見える。そしてさらにその向こうは大海原だ。さらに少し行くと、茶壺山の特異なピークも見えるようになる。岩尾根といっても、すべてが岩を歩くわけでななく、土の部分もある。ただ、ずっと途切れることのない登りであるので、特に夏であれば暑さに参るだろう。それと、一部は右が崖で切れ落ちた岩の上を歩くところもあるので、バランスを崩さずに通り過ぎることだ。

大分登ってきた
鼻頭角も遠くに見える
10時20分、381峰につく。ここからはじまる鋸齒稜の先には、半平山の頂上ピークが見える。その左には谷の奥に大きな草山が控えている。右側を見れば、俯瞰稜の麓に池の水面が反射している。黄金池と言われる、採掘作業で使われた池の名残だ。その左には、下山に通る予定の煙囪稜が俯瞰稜と平行して海際の水湳洞へ下っていく。空は晴れ上がり、青い大海原には白い汽船が浮かんでいる。360度の展望、樹木のない岩尾根ならではの素晴らしい眺めだ。今日はここに来て本当によかったと思う。

半平山から海への大パノラマ
海から草山への大パノラマ
岩尾根突端に立つメンバー
一箇所補助ロープが架けられている。ボランティの残したものだ。ここは滑ってしまうと、谷底まで滑落してしまうおそれがあるので、助かる。高度を上げる。山茶花の小さな花が咲いている。このような厳しい自然で生き残り白い花をつけている。草薮を漕いで急坂を登る。11時28分、右から俯瞰稜と合わさる。草薮の中の合流点で、景色はない。

岩尾根を進むメンバー
補助ロープのセクションを登る
大分登ってきた
高度は550mを越え、半平山への稜線の三分の二をやってきた。この高さになると、基隆山の向こうに、基隆の街や陽明山系の山々も望める。前方の半平山の三角ピークもだいぶ近くなった。左側の草山から苦命嶺を経て和美山への稜線や、石梯嶺などの山が下のほうに見える。稜線上の大きな岩を左に巻いていく。ここもしっかりしたザイルが固定されている。これもボランティによるものだろう。助かる。12時半、9時過ぎに岩尾根を登り始めて三度目の休憩をとり、食事を取る。日差しの中での休憩であるが、風が吹いているので暑さは感じない。実に爽快だ。

左の茶壺山が低く見えるようになってきた
正面が半平山ピーク、右の遠くに陽明山系も望める
岩尾根最後のセクションを進む
30分ほどの休憩後、岩尾根最後のセクションを行く。左側の山腹を巻いていく。稜線は岩壁が急で、切れており進むのは無理だ。巻き道は踏跡があり、問題ない。樹木も生えており危険はない。13時15分、半平山登山道と合流する。岩尾根の登攀は休憩も含めて約4時間、海岸際からは約5時間である。他のメンバーもすべて半平山の頂上へは過去に行っており、そのまま登山道を下る。ここは太いロープの取り付けられた岩のセクションである。やって来た劍龍稜と鋸齒稜の岩尾根に比べると、安全対策は万全だ。地方行政による整備がなされているから当然だが。

登山道合流点から草山方向を望む
半平山を背後にススキが広がる
枝尾根上の登山道を下り、茶壺山へ少し登り返す。三年前にはなかった、手すりが取り付けられている。振り返ると、午後の陽にススキの穂がゴツゴツした半平山を背景に一面に広がっている。茶壺山は、腹にある穴を通り過ぎる。登山道を下り、13時55分寶獅亭あずま屋で休憩する。ちょうどあずま屋で休んでいた、登山客がお茶を振る舞ってくれた。あずま屋のわきから、これから下る方向をのぞく。山腹をはう煙突が望める。そのわきの尾根が煙囪稜である。

煙囪稜から水湳洞方向を望む、下方に煙突が見える


石段の登山道を下る。登山者が多く上ってくる。ここは観光地の一部だ。車道に下りきり、右に曲がる。舗装がすぐに終わり、その先右に曲がり込むところの左の草むらに煙囪稜登山口がある。14時27分、ススキの間を登りはじめ、小ピークから尾根上の煙囪稜山道が始まる。ススキの間の踏跡はしっかりしている。黄金十稜人気のなせるところだ。忠実に尾根上を下る。登山口から十二、三分で大岩に来る。ここから石のごろごろする山腹を下る。下りきり、コンクリ円柱のわきを通り過ぎると、廃棄された煙突に下りる。

煙突内を進む




この煙突は、台金公司が銅精錬の過程で発生する煙を無人の山の上に排出するため、山肌をはっていく三本のコンクリ製煙突を建造したものである。廃棄されて久しいが、三本とも残っている。下りてきたこの煙突はその内の一本で、ところどころ壊れて陥没している。降り立ったところは壊れている場所だ。原型をとどめている数メートルの煙突トンネルを抜け、また壊れたセクションから煙突を離れ尾根上の道を進む。煙突の下部方向は、まだしっかり残っている。もともと毒性の強い煙を排出してものなので、あまり深く追わないほうが良いだろう。

午前中に登った劍龍稜と鋸齒稜の尾根が前方に見える
ススキの穂が傾いてきた陽光に反射する
14時55分、水平に進む道との十字路を過ぎる。右へ行けば黄金洞へ通じるとある。左へは台北への1062バスが発車する勸濟堂へつながる。直進して尾根をさらに下る。右側には午前中登った劍龍稜と鋸齒稜が長く半平山へ登っていく。反対側は、ススキが傾いてきた陽光を白く一面に反射している。基隆山が前方に見え、長仁社区が近づいてくる。15時13分、そのまま尾根を進む道と、左に長仁社区の道が分岐する。左に取り下る。最近開かれた道のようで、踏跡は尾根上ほど良くない。10分ほど下り、長仁路21号民家のわきに出る。道を左に少し進み、テーブル椅子の場所で最後の休憩を取る。

長仁社区に向けて下る
長仁路の角で休憩する
コンクリ階段を下っていく。道なりに進む。集落の一角に出る。左に取って進むが、道がはっきりしなくなる。近くの民家のおばあさんが、こちらに進むと良いと教えてくれる。それに従い反対方向へ進み、集落中の雑貨屋脇を降りていく。16時、濱海公路に着く。山の集落方向を見るとおばあさんがこちらをみている。手を振り感謝の気持ちを表す。道なりに進み、水湳洞バス停に着く。バス停から山を見ると、夕陽の中に十三層遺址とその後ろに下りてきた煙囪稜、そしてその上には茶壺山が高い。30分ほど待つと、16時35分に886番バスがやって来た。

十三層遺址の後ろに下ってきた煙從稜が望める
休憩込みの行動時間は約8時間である。歩行距離は約8キロ、約700数十メートルの累計登坂高度だ。終日好天気に恵まれ壮大な風景を楽しみながら、素晴らしい山登りができた。しかし、このルートは誰にでも進められるものではない。困難度は体力的にはクラス4、ルートは4~5としておこう。経験者向けのルートである。雨や風の強い時には、登らないほうがよい。

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