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2015-10-30

2015年10月29日 萬里北八斗山 名勝野柳を望む海の山を歩く

海岸線わきの北八斗山、左奥は丁火巧山。海岸線の遠くには原子力発電所
秋が訪れ,日差しが強く遮る樹木があまり多くない海岸際の山を登るのに適した季節がやって来た。今回は、月初に訪れた萬里瑪鎖山の隣の山塊ピーク、北八斗山を登った。この山塊は、標高472mの丁火巧山を最高に364mの八斗山などのピークを有し、そこそこサイズがある。全部を歩く場合は、それなりに時間が必要だ。今回は、その山塊の内、観光地野柳に近い北八斗山を海岸際の稜線から登り、別の稜線をへて下った。これらの稜線道は、北八斗山稜と駱駝峰稜と呼ばれるが、それぞれ最近ボランティアの登山者によって開かれたものである。

西側北八斗山稜から登り、東側の駱駝峰稜をへて下る
標高二百メートルクラスの低山ハイキング
台北近郊の山は、陽明山山系など日本統治時代の国立公園であれば、早くから登山道があったが、それ以外は今のように多くの登山道があったわけではない。今では、台湾は経済が豊かになっているが、以前は一般には登山をするような経済的余裕はなかった。日本も(また他の先進諸国でも)同じだが、登山はもともと金持ちの道楽である。その頃は、目的地はチャレンジがいのある高山などであり、いつでも行ける郊外の裏山ではない。だれも登山趣味でそんな山など登ろうとは思わなかった。経済的余裕が生まれ、中高年が郊外の山を多く登るようになっている。日本と同様に元気な退職者が増えていることもある。そうした人たちが、今ボランティアとして近郊の山道の整備を行っているわけだ。SNSの発達が、登山活動を活発にするのに役立っている。

台北から山を挟んで北東にある海岸線の山、陽明山山系の東側になる
今回は、出発がゆっくりだ。今日はガツガツ歩く山登りではなく、気楽に歩いた後海岸に降りて、漁港近くの店で海鮮料理を食べ帰る予定だ。実際、この数年間で台北近郊の主な地域はほぼカバーしてしまった。勿論まだ歩いていないところもあるが、それぞれの地域の様子が分かったので、近郊登山は訓練を目的にするものでなければ、最近一生懸命歩く気がしない。山登りは、いろいろな形態や目的があってもいい。一人で歩き始めた山だが、今は単独行がほとんどなくなってしまった。仲間との歩きも、登山の醍醐味である。

台北西バスターミナル1815番バス乗場
8時10分発の1815番バスに乗るべく、台北西バスターミナルに集合する。今日は、メンバー8名である。そのうち一人は、途中から乗車するので、バスターミナルからは7人で出発。平日のこの時間帯、市内を行くのには時間がかかる。台北市府ターミナルを通り過ぎ、高速道路にのる。基隆市内を過ぎ、萬裡野柳バス停には9時48分到着。台北西バスターミナルから、約1時間40分である。

旧台二号線わきの登山口
稜線に出たところで、景色が広がる
9時58分、支度をしてバスがやって来た旧台二号線を登り気味に戻っていく。新しい道が出来たので、四車線の車道はほとんど車の往来がない。3分ほどで、右に北八斗山稜への入口がある。入口の木につけられた藍天隊の道標は今年10月10日の日付だ。まだ真新しい。山腹の道を登り、数分で稜線上にでる。すぐ眼前に野柳港と野柳の半島が広がる。湾の右に連なる稜線は、駱駝峰稜だ。遠く水平線はぼんやりしている。中国本土から風で飛ばされてやってきたPM2.5のためだ。中国の環境を無視した経済発展は、自国民の健康に障害を与えるだけでなく、他国にまで影響している。実に困ったものだ。多く野柳観光にやってくる中国国民は、ぼんやりした景色が自国のせいだとわかっているのだろうか。

更に高度が上がったところでの展望、右奥は下山に通った駱駝峰稜、海に突き出た半島が野柳風景区
稜線上の道
他の海岸際の山稜が同じように、ここも低い灌木が生えている。右は切り立った崖だ。登るにつれ、見える範囲が広がる。10時18分、高度も100m近くなり、ボンヤリだが遠くに基隆嶼も見えるようになる。尾根はここで方向を変える。東側野柳湾方向は見えなくなり、西側の海岸線が足元に広がる。金山方向に連なる海岸線には原子力発電所が見える。その奥方向は、陽明山山系だが、やはりボンヤリだ。更に行くと、道は左に下がり気味に進み、10時35分最低部に到着、そこで大きく180度方向を変えてまた海側に登っていく。

金山方向の海を望む
廃棄されたトーチカ入口
10時43分、だいぶ登ってきた。高度は150mぐらい。少し休憩する。ここからは、今歩いてきた稜線の後ろにに海岸線と大海原が広がる。海の近い山の眺めは格別だ。メンバーが持ってきた自製アイスキャンディーをいただく。日差しが強くなってきて、冷たいものが嬉しい。まだ稜線道は続く。前方には丁火巧山が控え、右には後に登る北八斗山がある。緩やかな山稜を進む。そのうち灌木の背が高くなる。ここまで来ると季節風があまり当たらなくなるのだろう。溝が掘ってあるのがわかる。ここも清仏戦争の時の塹壕があるのだ。11時10分、トーチカがある。これは戦後国民党政府によって作られたものだ。今も昔も海岸線は防衛上重要なものだ。

別荘地が山腹に広がる、向こうの山は丁火巧山
不法投棄のゴミの山
左側が開け、緩やかな斜面には別荘群が見える。別のトーチカを通り過ぎ、そのうち道はジメジメした場所を過ぎる。不法投棄されたゴミがアチラコチラに散らばっている。美しい別荘の裏山はゴミの山、実に皮肉なものだ。別荘の住人は知っているのか、それとも目をつぶっているだけか。11時半、いきなり開けた場所にでる。廃棄された倉庫がある。その前を通り過ぎ、急坂を登り切る。そこで、廃棄産業道路に合流する。左右は草に覆われ、細い踏み跡だけの産業道路を登る。日差しが強くつらい。

北八斗山東南峰
北八斗山頂上の筆者
11時37分、左に八斗山方向の道を分岐する。そのまま、産業道路を登る。11時44分、北八斗山東南峰に来る。峰といっても、コンクリ基石が道端にあるだけだが。わきからの景色は広くて素晴らしい。やって来た北八斗山稜が下方に連なる。野柳は遠い。少し休んだ後、産業道路の末端から始まる山道を行く。しばらく平な道は、一度大きく下り登り返す。11時56分、そこが北八斗山頂上(標高246m)である。基石が埋まる頂上はそこそこ広い。北方向が開けているので、海側の展望が広がる。先ほどの東南峰よりさらに北八斗山稜の様子がわかる。食事をとりゆっくり休憩する。

北八斗山頂上からの展望
廃棄産業道路わきの山道入口
12時45分、長い昼食休憩のあと下山を開始する。もともと、時間が早く余裕があれば、八斗山を往復する予定であったが、暑いことや時間も遅いので今日はスキップする。いずれまた来ればよい。今日は、気楽な山登りである。往路を戻り、産業道路を下る。別荘わきからの分岐をそのまま通り過ぎ、さらに産業道路を下っていく。ジグザグの道のわきに、右へ山道が分岐する。産業道路はそのまま比佛利山莊へ行くが、通り過ぎお断りで文句を言われるようなので、少し遠回りだが山道を下る。急な道が続き、菜園をすぎて13時30分沢に下る。ここで小休憩する。

菜園わきを行く
農道と思われる道を進み、数分で民家のわきにでて、旧台二号線に着く。民家の黒犬がやってくるが、おとなしい。車道を左に登っていく。日差しを遮るもののなく、車道歩きはつらい。右に海が見えるのが慰めだ。比佛利山莊の正門前を通り過ぎ、13時53分、仁愛之家入口に着く。門を通り過ぎ進む。ここは斜面に広がる公立老人ホームである。下っていくが、地図で確認すると駱駝峰稜道の入口とは随分離れている。そこで、確認し戻っていく。野柳村登山道の入口でもある場所は、稜線に近い場所だ。道案内看板のある場所は、住民が手入れする花壇になっている。

旧台二号線から海方向を見る
仁愛之家上部にある野柳村歩道入口
野柳村登山道を少し登ると、すぐ右に急な土の道が登っていく。入口の藍天隊道標は、これも10月10日の日付である。補助ロープのある急坂が続く。数分で稜線は平らになる。ところどころ、左側の灌木がきれて展望ができる。下は野柳湾が広がっている。14時38分、トーチカ後を過ぎる。ここも海岸線に面し、軍事的に重要な場所だ。以前であればオフリミットの場所である。進むに連れ、所々から見える野柳半島がだんだん近づいてくる。14時49分、野柳港山(標高105m)と過ぎる。

駱駝峰稜から野柳を俯瞰する
その先から、稜線は大きく下り始める。急な坂道を下って行く。ここは身を乗り出す形なので、すこし緊張する。その後も、左の断崖の上端を下っていく。港湾の様子がよく分かる。その先の野柳半島もだいぶ近い。15時半、下りきり車道に下りる。ここからは、観光地域だ。外国人も含めた観光客が、奇岩を背景に写真を撮っている。我々は、ここで少し休憩する。

急な崖部分
15時45分、バスのりばへ野柳方向へ歩く。左の断崖が高い、先ほどはあそこを歩いていたのだ。数分で、東澳漁港バス停に来る。そこで待っていた地元の人が、F923バスがすぐやってくるという。また、途中の龜吼漁港には安い海鮮料理店があるので、紹介するという。その勧めに従い、程なくやって来たバスで向かう。3,4分の乗車で到着し、海鮮料理店へ案内してもらう。そこでは、安くておいしい料理を食べることができた。前回もそうだが、地元の人の案内で結構よいことがある。食事を終え、5時半暗くなってきた萬里をあとにした。

駱駝峰稜末端部分
食事をした龜吼漁港の海鮮料理店
秋とは言え、太陽が照ると日中はやはり暑い。勿論夏ほどではないが、森以外の部分を歩くことも多く、それなりに疲れる。気温が高いと、やはりバテやすい。約9.5kmを休憩込みで約6時間で歩いている。登攀高度は累計で360m、初期の目論見通り気楽なハイキングである。とは言え、海と山の景色は素晴らしく、これはこれで十分に意義のある山行である。ルートはクラス3、体力はクラス2である。山道は万人向けではない。初心者は、すこし危なく感じるところがあるかもしれない。

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